研究課題/領域番号 |
15KK0030
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保田 尚之 北海道大学, 理学研究院, 特任准教授 (40359211)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | データレスキュー / アジア太平洋域 / 気候変動 / 気象学 / 気候学 / 航海日誌 |
研究実績の概要 |
イギリス気象庁Met Officeに2017年7月25日-8月30日まで滞在し、Rob Allan博士と、昨年度に引き続き、図書館などに埋もれてこれまで利用されなかった過去の気象資料をデジタルデータに復元する「データレスキュー」を行い、過去200年間の気候を明らかにする共同研究を行った。 過去115年間のフィリピンの降水量データからモンスーンオンセットを調べ、モンスーンに入る時期が早い傾向が1990年代からと20世紀前半に見られ、台風活動が関係していることを明らかにし、論文を出版した。日本とフィリピンの過去120年間の台風活動を調べ、繰り返し被害をもたらす台風について、2013年台風30号Haiyanと2011年台風12号に着目し、フィリピンに類似の高潮被害をもたらした台風が過去3回上陸し、さらに類似の紀伊半島に土砂災害をもたらした台風が1889年に上陸したことを明らかにし、論文が受理された。Rob Allan博士が代表を務める国際的なデータレスキュー活動Atmospheric Circulation Reconstructions over the Earth (ACRE)に関する国際会議がアイルランドと北京で開催され、それぞれの報告を論文にまとめ、出版した。 国内で実施しているデータレスキューの研究者を束ねて、国際的なデータレスキューの枠組みで協力するACRE-Japanを組織し、代表となった。 昨年度入手したペリー艦隊の航海日誌のうち、Mississippi号がアメリカ東海岸を出航し、日本に来航し、アメリカ東海岸まで戻る地球一周の航海日誌(1852年-1855年)に記載された気象データをデジタル化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで江戸時代の日本には気象測器によるデータがないと考えられていたが、イギリス気象庁Met OfficeのRob Allan博士と共同研究を実施することで、実は多くの外国船が気象測器を積んで気象観測を行いながら日本近海を航行し、航海日誌に気象データが残されていることがわかった。これらの気象データを用いるとこれまで過去100年で考えていた気候変動の研究が、過去200年まで広げて研究が可能となった。 昨年度はアメリカ公文書館に保管されているペリー艦隊10隻の航海日誌を入手し、今年度はMississippi号がアメリカ東海岸を出航し、日本に来航し、アメリカ東海岸まで戻る地球一周の航海日誌(1852年-1855年)に記載された気象データをデジタル化した。さらに今年度はイギリス気象庁に保管されている膨大なイギリス海軍の航海日誌のうち、中国や日本近海を航行した391もの航海日誌のスキャンをClive Wilkinson博士との共同研究で入手した。 Rob Allan博士と研究協力を実施することで、論文の執筆も進み、データレスキューに関する論文を数多く出版した。 また、Rob Allan博士が代表を務める国際的なデータレスキュー活動ACREに刺激を受けて、日本国内でデータレスキューの研究活動を続けている研究者を束ねて、国際的なデータレスキューの枠組みで協力するACRE-Japanを組織し、代表となった。国際共同研究強化の目的である海外の研究者と共同研究することで、これまで実施していた研究が飛躍的に発展しつつあり、順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度にあたり、共同研究者であるRob Allan博士が代表を務める国際的なデータレスキュー活動ACREの国際会議を日本で開催することを計画している。海外の先進的なデータレスキューの研究活動を日本の研究者に紹介し、交流を深めることで日本のデータレスキューの研究活動の発展に貢献していきたいと考えている。 また、共同研究から生まれた新しい研究である、外国船の航海日誌の気象データから江戸時代の気候を復元する研究を発展させるため、再びイギリス気象庁Met Officeに訪問し、共同研究者のRob Allan博士、航海日誌の研究を進めているClive Wilkinson博士、Philip Brohan博士と議論を深める計画である。
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