研究課題
本年度は,6月末に包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)で開催された国際会議SnT2017の会期中に,共同研究者のLe Bras Ronan博士とNurcan Metal Ozel博士と共同研究に関する打ち合わせを行った.本共同研究では,CTBTOが有するハイドロフォン,地震計およびインフラサウンドのデータを共有には,CTBTOが最近開発した利用システム (vDEC)を利用することで合意した.一方,本題の海底火山および海洋島火山の活動モニタリングについては,西之島火山活動について,周辺海域および最近接の島である父島地震観測点で検出された噴火に関するデータについて,新しい見解を見いだすことができた.1883年のクラカトア火山の噴火や1991年のピナツボ火山噴火の際,陸上の空振計では海洋を含む固体地球の重力波と大気音波のカップリングモードが観測されたが,海底や海面でも同様に海洋長周期重力波と大気音波がカップルしたモードが検出された.このモードは数100秒帯に卓越するものであり,噴火に伴う音波の数ヘルツの波とは区別される一方,この波を検出することにより噴火のリモートモニタリングを図ることが期待できる.この結果を踏まえ,CTBTOが1996年以降にグローバル展開してきた海洋島地震計,ハイドロフォン,インフラサウンドデータを用い,海洋長期重力波と大気音波のカップリングモードの検出を網羅的に行うことにより,未知の海底および海洋島火山活動に伴うシグナルを捉える可能性は十分にあると期待される.更に,1999年以降に太平洋に展開してきた延べ数200点の海底地震観測で用いた広帯域地震計および装着した微差圧計は,当該モードの卓越周期に十分感度をもつものである.これらも併せて解析することでネットワークが強化され,活動予測に資する検出システムを構築することを目指す.
2: おおむね順調に進展している
現在所有するデータについては解析を進めており,海洋長周期重力波と大気音波のカップリングモードの検出という新しい見知を見出した成果をあげている一方,本来予定していた共同研究相手先とのやりとりが十分でない.その主な理由としては,申請時は前職の研究員であったが,採択とほぼ同時に大学に異動したため,想定していなかった講義や実習のスケジュールの都合,先方での長期滞在が実現されていないためである.
実績概要で述べたように,新しく見出した海洋長期重力波と大気音波のカップリングモードの検出については,CTBTOが1996年以降にグローバル展開してきた海洋島地震計,ハイドロフォン,インフラサウンドデータを用い,網羅的にその検出を行うことにより,未知の海底および海洋島火山活動に伴うシグナル検出を行う.更に,1999年以降に太平洋に展開してきた200点以上の広帯域海底地震(Guralp CMG-3T) 及び微差圧計(独自開発;Araki and Sugioka, 2009)を用いた海底アレー観測網で取得されたデータを加え,統合的な解析を推し進めていく.本計画の最終目標は,気象庁などの関係省庁と連携した未知の海域火山活動の予測に資するシステムを構築することである.更に将来的には,観測網の整備の立ち遅れた環太平洋火山帯に位置する諸外国の気象庁とも連携体制をとり,実用性を重視した防災及び減災に役に立つシステムとして構築することを見据えている.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件)
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