研究課題
前年度に引き続き、チャ試料は品種「サヤマカオリ」を使用し、静岡県農林研究所茶研究センター・勝野剛博士が栽培、摘採、加工試料を調製し、各課題(1~6、課題5は前年度で中止)での実験、解析に供した。課題(1)アルコール系香気成分配糖体として、2-phenylethyl primeverosideの合成を達成した。さらに本化合物のマロン酸エステル化を検討し、モノマロニル体、ジマロニル体およびモノマロニル体の分子内ジエステル体が生成することを確認した。アルコール系香気成分monoglucoside:ドROGlc、primeveroside: ROPri、ROGlcのマロン酸エステル:ROGlcMalの一斉分析メソッドを確立した。釜炒過程後のROPri量増加には再現性があるため、分子生物学的に重要な知見と言える。課題(2)遺伝子発現解析および香気成分変動を分析し、解析した。数理解析に供するデータを得た。製造過程の条件が異なる茶サンプルのRNA-Seq解析を実施した。予測モデル作成の入力データとなる膨大な遺伝子発現データの蓄積に成功している。課題(3)モノテルペン類の単糖、2糖配糖体合成を実施し、neryl glucoside、geranyl glucoside、neryl rutinoside、geranyl rutinosideの合成を達成した。課題(4)チャ葉およびチャ培養細胞をプロトプラスト化して,液胞の分離方法について検討した。またすでにプロトプラスト化の成功例があるバラを用いて方法検討を行い液胞成分の分析時に利用する。課題(6)遺伝子発現解析および香気成分変動解析用のチャ葉を採取し,分析を行い数理解析に供するデータを得た。数理解析に資する全データを基に解析モデル、予測モデルを構築する。
2: おおむね順調に進展している
課題(1)製造過程で変動する二次代謝産物の糸口を掴んでおり、順調に進捗している。課題(2)課題達成に必要な遺伝子発現データの50%が取得されており、順調な推移であると言える。香気成分、遺伝子発現変動を分析し数理解析に供するデータを得た。順調に推移している。課題(3)二糖配糖体のマロン酸エステルの合成をはじめて達成し、新たに分子内ジエステルの合成も確認するなど計画以上の成果を得た。課題(4)香気成分配糖体はプロトプラスト化と解析実績があるバラのプロトプラストを用い、LC-MSによる解析でチャプロトプラストへの活用の可能性を示唆するなど順調に推移している。課題(6)解析、予測モデルに必要な数理解析に必要なデータを順調に取得しており、試行錯誤しつつモデル化を試みている。
課題(1)釜炒り後のROPri量増加の原因解明に注力する。課題(2)高温等の栽培条件、高温加工条件での遺伝子発現データの取得に取り組む。課題(3)3級アルコール系香気成分の単糖、2糖配糖体の合成を進め、ライブラリーを充実する。課題(4)プロトプラストを用いた液胞成分の分析を推進する。課題(6)最終年度内に解析モデルに数値データをインプットするとともに、実際の変動データとモデル化によるデータ予測の妥当性を検討する。前年度まではデータの取得、モデルの試行に注力したが、最終年度には学術誌への論文投稿を確実に実施する。
香気成分、遺伝子発現、液胞成分の分析の一部を最終年度に集中的実施することとしたため。
チャ葉、バラ花弁プロトプラスト調製、香気成分、遺伝子発現、液胞成分の分析に次年度経費と共にまとめて使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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