研究課題/領域番号 |
15KT0042
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
伊勢崎 賢治 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30350317)
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研究分担者 |
岩崎 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)
宮城 徹 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (30334452)
Mohamed Abdin 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (40748761)
福田 彩 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (90650375)
池田 満 南山大学, 人文学部, 講師 (90596389)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 過激化 / 脱過激化 / カシミール / インド / パキスタン / 民族自決運動 / テロリズム / 対テロ対策 |
研究実績の概要 |
過激化のメカニズムの体系化、そして脱過激化のプログラムの理論構築の実践地域として選定したインド統治下カシミールにおいて、本研究が危惧した新世代の「過激化」が2016年7月より急激に顕在化している。それは、モディ政権BJP:インド人民党とPDPカシミール地域政党:人民民主党との連立政権運営の停滞の中、従来の宗教・政治組織の指揮命令に囚われないティーンエイジャー(カシミール自決抵抗の歴史には見られなかった女子の蜂起を含む)の自発的な蜂起、武闘化、戒厳令を敷く治安当局との衝突の激化である。急激な治安悪化により同地訪問が困難になったため、本年度は、現地の影響力のある活動家、言論人を第三国日本に招聘し、現在起きている「新世代の過激化」について、その発生の構造的そしてトリガー的要因の体系化を行った。2016年12月、インド側カシミールからPDP青年部長、最大地方紙Raising Kashmir編集長を含む7名、パキスタン側からは3名のカシミール問題研究者、計10名で、本学において5日間非公開で行われた協議から抽出された過激化メカニズムの仮説的言説は、英語の商業出版を視野にいれた各参加者の入稿と編集が鋭意進行中である。 一方、「過激化」の最新のケースとしてカシミール問題をより多角的に捉えジェネリックな「脱過激化」のプログラムを特に高等教育の方法論として構築すべく、本学既存のインド、パキスタンを含む紛争経験国 7 カ国の 9 大学との「平和構築・紛争予防学学術ネットワーク」において協議し、具体的なカリキュラムの構築を試みた。2017年3月に本学に3日間、インド、パキスタン、アフガニスタン、インドネシア、スリランカ、カンボジアの提携校から代表研究者を招聘し策定した新カリキュラムは、「新世代」が数多く通うカシミールの当該大学を含めて、2017年5月から試験的に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究申請時には予測できなかったインド統治下カシミールの治安悪化、同時に、本研究が危惧予測した「新世代の過激化」の台頭、ならびにオバマ政権末期から迷走しているアフガニスタンにおける対テロ戦戦略の混迷によりパキスタンでの既存の脱過激化プログラムの調査実施の物理的に困難なため、該当年度の活動は、インド側カシミール問題に限定し、第三国日本に関係活動家、研究家を招聘し、安全な発言の場を提供し、それを他の紛争国の研究者との交流で静的に体系化する試みを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2016年12月の本学の会議で現地活動家、研究者からコンセンサスとして表明されたのは、「過激化」のもう一方のアクターであるインド本国のヒンドゥー至上主義勢力との接触、交流、そして、願わくば、過激化メカニズム理論構築と脱過激化対策の共有であった。インドのモディ政権、アメリカのトランプ政権の出現で、少なくともそう喧伝される「排外主義」が席巻する国際情勢において、「弱者」側のそれだけでなく、「強者」側の過激化を理論構築上の視野に入れ、次年度には、日本において、カシミール・ムスリムの主要活動家・発言者と、モディ政権のバックボーンになっているヒンドゥー至上主義団体RSS民族奉仕団の指導理論家との問題共有の場を設け、より包括的な過激化メカニズムの理論構築を測りたい。 加えて、「平和構築・紛争予防学学術ネットワーク」のプログラム評価で得られた知見をベースに、大学生以外の対象に向けて、より汎用性のある脱過激化プログラムの指針を理論構築したい。
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