研究概要 |
ヒト樹状細胞に備わる微生物レセプター、特にToll-like receptor(TLR)群の構造・機能・細胞応答を解析し、感染による宿主変調と難治性疾患・病態の関連を分子レベルで明らかにする。本年度明らかにした点を列挙する。1.ヒトTLRに対する単クローン抗体をパネル的に作製した。2.ヒト樹状細胞におけるTLRの分布を明らかにした。3.TLR3(dsRNAのレセプター)のシグナル分配機構と樹状細胞(DC)活性化の多様性を解明した。4.さらに樹状細胞のウィルス感染応答とTLR経路の関連を解析し、5.樹状細胞がNK,CTL細胞活性化を指向するメカニズムとTLRシグナルの関連を検討した。6.骨髄性樹状細胞(mDC)においてCTLはMyD88アダプター依存性に誘導され、NKはTICAM-1依存性に誘導された。7.mDCのdsRNA認識機構は複数あるが、TLR3依存性の場合もRIG-I依存性の場合もNAP1(IKKε,TBK1)複合体を介することが判明した。ヒトmDCにおいてウィルス核酸成分のパターン認識レセプターとして、TLR3,TLR8が細胞内小器官で機能する。8.mDCにおいて細菌成分のパターン認識レセプターとして、TLR1,2,4,5,6が細胞表面で機能する。以上の結果は、ウィルス、細菌成分によって樹状細胞が特有の表現系を誘導することを支持する。またウィルス感染が抗原提示能を変調する機構とTLRシグナルとの関係に分子機構からアプローチする資料を提示する。これまで未知の応答が多かった樹状細胞と獲得免疫のinterfaceに、解明の鍵を与える点で新たな創造が期待できる。
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