研究概要 |
我々は既に脂質の構造を選択することによって、溶媒の極性によって、Pt-Cl-Pt間距離を段階的に制御でき、ソルバトクロミズムを示す錯体の合成に成功した。本年度は、脂溶性白金混合原子価錯体が、大きなソルバトクロミズムだけでなく、顕著な会合形態変化を示すことを見いだしたので報告する。 溶液中における[PtII(en)_2][PtIVCl2(en)_2](脂質)4(en:エチレンジアミン)の自己集合特性は、脂質分子の分子間相互作用に依存するが、これは脂質と溶媒分子の相互作用の影響を受ける。たとえば、[Pt(en)2][PtCl2(en)2](スルホフェニルカルボン酸誘導体)4はクロロホルム中でオレンジ色(λmax=473nm)、ジクロロメタン中で赤色(λmax=513nm)の分散液を与え,それぞれナノワイヤ(長さ20μm以上,幅20〜100nm)、ナノ結晶(長さ200〜300nm,幅100nm)を形成した。 このソルバトクロミズムは,脂質部位の溶媒和が一次元錯体の構造および電子状態に影響を及ぼすことを示している。この効果は,[Pt(en)_2][PtCl2(en)_2](スルホコハク酸誘導体)4にも適用できる。この錯体は、クロロホルム、クロロシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンに溶解し、藍色を呈した(λmax=596-7nm)。 この溶液を加熱し再冷却するとクロロホルム溶液では藍色を呈する(λmax=563nm)が、クロロシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン分散液では各々青色,赤色を呈した(λmax=523nm,469nm)。この結果より、溶媒分子の極性によって脂質分子の会合状態が異なり、その対カチオンであるPtII錯体とPtIV錯体のパッキング構造に影響をもたらすことによって、形成される電子状態が変化することを明らかにした。さらにこの再冷却分散液では、会合形態にも影響を及ぼし、溶媒分子に応じてナノワイヤ,ナノファイバ、ナノ粒子を形成した。 このようなソルバトクロミズムは、親媒部に結合する分子との相互作用を一次元錯体の電子状態の変化、会合形態(柔軟性)の変化として出力する情報変換機能を内在していると考えられる。
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