研究概要 |
本年度は,スピン注入磁化反転に必須の電子ビーム露光による磁性材料の微細加工の最適化を行なうとともに,この最適化条件をもとに,加熱磁化反転層として考えているTbFeアモルファス合金膜を微細加工し,パルス電流熱磁気記録を行なった. (1)電子ビーム露光微細加工として,レジストマスクエッチング法とリフトオフ方を検討した.被加工物質は主に磁性材料であり,スパッタ法によるTbFe等のアモルファス膜,NiFe多結晶膜および分子線エピタキシー(MBE)法によるCoFe単結晶膜などを用いた.レジストマスクエッチング法では電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマによるArイオンエッチングを用いた.この場合,レジスト膜厚を最適化し,残留レジストをECRプラズマにより生成した酸素ラジカルによる剥離を行なうことで,100nm以下の精密な加工が可能であることが分かった.リフトオフ法では二層レジスト法を用い,それぞれの層のレジスト膜厚を最適化することで,スパッタ磁性膜膜を300nm程度のスケールで加工可能であることが分かった.これをさらに微細化するためには,スパッタ粒子の直進性が重要となることが判明し,今後成膜装置の改造を検討する.また,電子ビームリソグラフィーとフォトリソグラフィーを併用することで,スピン注入素子を作製する. (2)リフトオフ法によりTbFeアモルファス合金膜を微細加工し,パルス電流による熱磁気記録を行なった.加工サイズは2μm×2μmから500nm×500nmとした.記録磁区の確認として磁気力顕微鏡(MFM)による記録磁区観察と異常ホール効果による電圧検出を試みた.異常ホール効果検出のため300nm程度の電圧検出配線も同時に加工している.パルス電流書込みはまず,500Oeの磁場中で1μsecのパルス電流を印可し,その記録磁区をMFMで観察することで確認した.これにより10^6A/cm^2程度の低電流密度で磁化反転可能であることを確認した.次に異常ホール効果により臨界電流密度の印可磁場依存性を検討した.記録磁場を350Oeまで減少しても記録に必要な臨界電流密度は1割程度の上昇で済むことを確認した.今後は下地層を検討し,熱効率を高めることによりさらに臨界電流密度の低下が期待される.
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