研究課題/領域番号 |
16320083
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐原 哲也 明治大学, 政治経済学部, 助教授 (70254125)
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研究分担者 |
石田 勇治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30212898)
市野川 容孝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30277727)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 助教授 (50272480)
薩摩 秀登 明治大学, 経営学部, 教授 (70211274)
丸川 哲史 明治大学, 政治経済学部, 助教授 (50337903)
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キーワード | 民族浄化 / 民兵 / ジェノサイド / 地域紛争 / 強制移住 / 戦争犯罪 |
研究概要 |
過去2年間の研究の進展によって、民族浄化が発生するメカニズムの中で、有力者や政党、その他の民間団体が組織する民兵の役割が重要であることが明らかとなった。そこで、2006年度はこの問題を重点的に検討し、国際比較を行うこととなった。そして、この問題に同じく関心を寄せていたセルビア共和国ベオグラード市の現代史研究所の協力を得て、9月14日〜9月16日に同国ヴラーニェ市において国際会議を開催した。この会議の結果、以下の知見を得ることができた。旧ユーゴスラヴィア紛争、とりわけボスニア内戦の民族浄化において、民兵が非常に大きく関与していた。彼らは住民の強制収容、追放の主たる実行者であり、残虐行為の大部分が彼らによって行われていた。中東研究者からは、パレスチナやアフガニスタンでも民兵が残虐行為の主役であることが指摘された。歴史的に見ても、同様の現象は、19世紀後半以降現在に至るまで、バルカンその他の地域において紛争発生時に、正規軍による軍事行動とは別に、あるいはそれを補完し、また場合よっては対抗する形で民兵による略奪、焼き討ち、集団殺害が発生することも報告された。総じて、民兵は国家秩序解体時の権力の不在状況下において発生しやすく、多くの場合において、住民への迫害、略奪、虐殺の主要因となると結論された。民兵の出現を防止することが民族浄化を抑制する重要な手段であり、今後はその具体策を検討する課題も残った。また、民兵は民族の英雄として歴史において美化される傾向があり、これが残虐行為を助長することも明らかとなった。特に、この点ではホブスボウムの指摘する「原初的抵抗者」という概念を批判的にとらえ直さねばならないという課題も見つかった。
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