研究分担者 |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (20209208)
三牧 孝至 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40116108)
辻井 正次 中京大学, 社会学部, 助教授 (20257546)
木下 孝司 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (10221920)
岩田 吉生 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (20314065)
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研究概要 |
今年度,本研究グループにおいては,吃音,聴覚障害,高機能自閉症児について,それぞれの分野の研究担当者が自己意識について文献のレビューや,調査,実験研究などの成果をまとめ,情報交換を実施した。 廣嶌は吃音児を対象にしたグループ支援を実施し,その中の子どもの発言を検討することで,吃音そのものの問題というより,吃音に対するまわりの評価により形成されてくる吃音へのネガティブな意識が問題の大部分を占めていることを指摘した。また、板倉寿明との共同研究で,吃音児の自己受容の低さは,吃音そのものへの否定ではなく,たとえば友達作りが下手なことや,人を笑わせるのが下手といった,吃音が影響する事柄に対する受容の低さであることを明らかにした。 岩田は聴覚障害児の研究分野で研究を行い,聴覚障害児の自己意識の形成には障害認識の様態が重要であることを指摘した。すなわち,聴覚障害児の中でも特に難聴児は聴者の中で生活している者が多いため,障害の状態が周りに理解されにくいことから派生する,難聴児の「立場の曖昧さ」や「アイデンティティの困難さ」が,聴覚障害児の自己認識の大きな問題となっていることを指摘した。 別府は高機能広汎性発達障害児を対象にして,Lee & Hobsonの手続きによる半構造化面接とTSTを用いた研究を行い,高機能広汎性発達障害児の自己意識の発達的変化について検討した。 このように,吃音児,難聴児,高機能広汎性発達障害児における自己意識についての知見および研究結果を比較検討した結果,それぞれ障害のある子どもたちは成長とともに,ネガティブな自己意識を形成する傾向が高いことが確認された。しかし,障害の種類や特質によって,自己意識の形成に関わる要因がそれぞれ大きく異なっていることも明らかになった。今後は,これらの子どもたちの相違点に焦点をあて,ネガティブな自己意識の形成過程を究明していくことが課題であると考えられた。
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