研究分担者 |
金銅 誠之 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (50186847)
金光 滋 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (60117091)
金子 昌信 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (70202017)
江上 繁樹 富山大学, 工学部, 准教授 (60168771)
小嶋 久祉 埼玉大学, 理学部, 教授 (90146118)
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研究概要 |
本研究は,保型L関数の主として解析的な性質とその応用,そしてそれと密接な関係を持つ多重ゼータ関数の理論の研究を目的として掲げたものである。まず原理的な側面としては,関数等式や近似関数等式,漸近展開などの種々の解析的公式を,モジュラー関係式の理論の立場から統一的に把握する研究が順調に進展した。この枠組みで,DirichletのL関数やHurwitzのゼータ関数の平均値の漸近展開に関する桂田と松本の公式もモジュラー関係式の立場から説明できるようになった。また,保型形式のリフティングの理論における最近の重要な成果は池田リフトの発見である。池田リフトの像空間についてはMaass空間論とのアナロジーからKohnenがある予想を提出していたが,この予想をある場合に解決することができた。池田リフトの像になっているような保型形式のL関数は詳しい分解法則を持つので,それを用いて二乗平均値の精密な評価が可能であることを発見し,特に解析数論におけるlarge value lemmaを援用して,ある種の場合には二乗平均値のオーダーをほぼ正確に決定することに成功した。次に多重ゼータ関数の理論においては,多重ゼータ値の二重シャッフル関係式の研究が進展し,その一般化やp進化についても成果が得られ,数論的な構造が明らかになってきた。より解析的な方向では,関数関係式の理論がルート系のゼータ関数の立場で構造的に把握され,その本質がWey1群の対称性でかなりの程度説明可能であること,またDynkin図形の言葉で多重ゼータ関数の族の帰納的構造が記述できることが判明した。
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