研究分担者 |
榎本 彦衛 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00011669)
吉野 正史 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00145658)
松本 眞 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70231602)
川下 美潮 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80214633)
須川 敏幸 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30235858)
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研究概要 |
本研究の目的は,上反平面を種数2以上の閉リーマン面のタイヒミュラー空間に,モジュラー群を写像類群に,モジュラー曲面を閉リーマン面のモジュライ空間に置き換えることによって,古典的なモジュラー曲面上で展開され,多方面で応用されている理論が,どのような形に拡張,あるいは,変貌するかを,力学系理論,エルゴード理論の視点から見極めようとする試みの一端をになうことである.当面の目標はタイヒミュラー測地流の周期軌道分布に関する素数定理型定理を特殊な場合に導くことである.初年度(平成16年度)は,Rauzy inductionに関するゼータ関数の解析接続に焦点にしぼって研究を進めたが,得られた結果は目標とする素数定理型定理を得るためには不十分なものであった.今年度(平成17年度)は,その改良に向けて,引き続き特異点を許容する双曲力学系のゼータ関数の具体例に関してより体系的な解析接続の手法を発掘することと,その次の段階への準備として,熱力学形式によるRauzy inductionの大域的性質の解析に重点をおいた.前者については,予想以上に難しい問題を含んでいることが判明し,今後も改良の努力を要することがわかった.副産物として以前から進めていた無食条件をみたす2次元散乱開撞球系のゼータ関数の原点での特殊値に関する結果を完成することができた.この結果は学術雑誌Ergod. Th. & Dynam. Sysに受理され掲載される予定である.後者については,あるクラスに属する繰り込まれたRauzy inductionに関する弱局所型中心極限定理を完成することができた.その結果は特殊な場合として,種数1の場合の素数定理型定理の証明の布石として以前証明した連分数変換に関する同様の結果を含んでおり,これと現在難航している解析接続の研究が成就すれば,当初の目的がほぼ達成される予定である.
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