研究概要 |
本研究では、褐色矮星も含んだより広い質量スパンの星の初期質量関数(IMF)を確立するために、数多くの星形成領域に対して、これまでにない広域かつ高感度の赤外線サーベイ(掃天)観測を行う。星形成領域の近赤外線観測は、その中で生まれる星ぼし(若いクラスター)の質量分布を、そのままIMFに焼き直すことができる。生まれたばかりの星は重力収縮のエネルギーで十分明るいために、非常に軽い天体まで検出することができる。また、近赤外線のカラーや偏光を利用して、背景星と分子雲に付随した若い星を区別することができる。 今年度に得られた成果のうち主なものを挙げる。 (1)昨年度に引き続き、南アフリカにあるIRSF1.4m望遠鏡、ハワイにあるすばる・ジェミニ両望遠鏡を用いて、太陽近傍の星形成領域についての観測・解析を進めた。南アでの観測は、国立天文台と名古屋大学が共同で開発した近赤外波長3バンド(J,H,Ksバンド、波長それぞれ1.25,1.63,2.14ミクロン)同時観測カメラを用いて行った。具体的な観測領域は、へびつかい座・カメレオン座・みなみのかんむり座・オリオン座・ほ座等の分子雲である。その結果、これらの分子雲において、若い褐色矮星の普遍性を確認し、中質量星から木星質量程度の惑星質量天体に至るまでの質量関数について差異を議論した。ほ座および南のかんむり座分子雲についての成果を学術論文として出版した。 (2)マゼラン星雲ブリッジにおける中質量の若い星の探査を行い、その結果をアストロフィジカルジャーナルに出版した。 (3)IRSF望遠鏡用の赤外線カメラIRSFに偏光装置を搭載し、偏光サーベイ観測を継続した。これにより、星周構造を伴う若い星を多数検出した。 (4)すばる望遠鏡を用いた分光観測によって、へびつかい座分子雲において複数の低温・低質量天体を発見した。
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