研究概要 |
4級不斉炭素は、多くの生理活性物質に見られる不斉中心であることから、その効率的合成法の開発は非常に有用である。これまでに、触媒的かつエナンチオ選択的な不斉4級炭素構築法として、不斉アルドール反応、不斉アルキル化反応、不斉Diels-Alder反応、不斉Heck反応など多彩な手法が報告され、実際にそれらを鍵反応として用いた天然物の全合成研究の報告例もある。 今回報告者は、新規アプローチとして、キラル遷移金属触媒を用いるエナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応による不斉4級炭素構築法を達成した。すなわち、アルケン部分に置換基を有する1,6-エンインとアルキンとの[2+2+2]付加環化反応が進行することにより、橋頭部に不斉4級炭素をもつ二環性化合物が得られた。本反応は、不斉ホスフィン配位子としてtolBINAPをもつキラルカチオン性キラルロジウム錯体を触媒として用いることにより、高エナンチオ選択的に進行した。本反応は、アルキン上の置換基、アルケン上の置換基として、水素、アルキル基、フェニル基、いずれの場合にも、高収率かつ高鏡像体過剰率で、付加環化体を与えた。さらに、カップリングパートナーとしても、対称、非対称、さらにはアセチレンガスを含め、種々のアルキンが適用可能であり、対応する不斉4級炭素をもつ二環性化合物が高不斉収率で得られた。
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