研究概要 |
本研究の目的は、ロス・ナランホス遺跡考古学調査を中心に、メキシコ合衆国チアパス州からグァテマラ共和国、エル・サルバドル共和国にかけての太平洋岸とその周辺地域に於いて、メソアメリカの古代都市への発展過程を解明することである。 ロス・ナランホス遺跡では、2,3,6号建造物の発掘調査を行い、当該遺跡での都市への発展過程を研究した。同時に、地形測量も実施した。チャルチュアパ遺跡タスマル地区では発掘修復された建造物を測量すると共に地形測量を実施した。この地区最大の建造物であるB1-1建造物や球戯場(B1-3,4)の発掘調査から都市としての発展過程を調査研究した。また、タスマル地区を含むチャルチュアパ遺跡全体の都市の発展を今までの発掘資料から再検討した。コパン遺跡においては、都市としての発展を示す資料を収集した。トナラ地域で行った考古学調査からメソアメリカ古代都市への発展過程に関する考古学資料を収集した。また、中米地域で年代決定のための鍵層となるイロパンゴ火山灰の年代を測定するために、火山灰の分布を調査し、火山灰に埋もれた埋没林で試料を収集した。 ロス・ナランホス遺跡では建造物の時期的変遷から古代都市への発展を明らかにした。タスマル遺跡では、建築構造から古代都市の発展を明らかにした。コパン遺跡では古典期における都市の発展を明らかにした。トナラ地区遺跡群では、先古典期から後古典期に至る都市への発展過程を明らかにした。 各遺跡の古代都市への発展を示すことが出来たが、メソアメリカ古代都市への発展に共通する規則性を解明することは出来なかった。今後の課題として、メソアメリカの古代都市を時間的空間的に様々な事例を比較研究し、メソアメリカ文明における古代都市の特質を明らかにする必要がある。また、都市を経済的な面から支えた集落群と都市の関係も明らかにし、メソアメリカ文明の実態を解明することも今後の課題となる。
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