研究課題/領域番号 |
16405017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40172978)
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研究分担者 |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (00177750)
大井 徹 森林総合研究所, 関西支所・生物多様性研究グループ, グループ長 (10201964)
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 准教授
丸橋 珠樹 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20190564)
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キーワード | アカゲザル / カニクイザル / 遺伝子浸透 / 交雑 / インドシナ半島 / レフュジア / 系統地理学 / 進化 |
研究概要 |
ベトナムでは中央高原地方で調査を行ない、分布データおよび形態・遺伝資料を収集した。タイとラオスでは一時捕獲調査を行ない、分布境界域のカニクイザルとアカゲザル両種のデータ収集を行なった。これにより、インドシナ半島域におけるカニクイザルとアカゲザルの関係が明らかになった。ベトナムでは両種は、かなりの変異幅をもった強度で互いに遺伝子浸透を受け、中間のさまざまな形態を示す。一方、タイとラオスでは、クラ地峡以北のカニクイザル、および境界域のアカゲザルは、それぞれで集団間変異性の低い、中間的形態を示した。この遺伝子浸透パターンの違いは、氷河期のレフュジア(避難場所)の地理的条件の違いによるものと推測された。ベトナムではレフュジアはチュオンソン山脈の森林にあり、南北に長い地域で両種が入り交じった。一方、タイとラオスでは、カニクイザルは少数の限られたレフュジアに逼塞し、そこにアカゲザルからの遺伝子浸透があった。アカゲザルは後氷期の気候の変動に伴い、アカゲザルとカニクイザルの境界域が南北に変動し、そこで遺伝子浸透が起こったと推測された。収集した遺伝子資料を、今後解析し、以上の仮説について検討する予定である。 バングラデシュにおける調査から、同国に分布するアカゲザルは形態的に西グループに近く、ミャンマーの集団に遺伝的に近いことが明らかとなった。同国東半のアカゲザル集団は、STR(短塩基配列の縦列反復)の数でひじょうに多様であるという、独特の遺伝的特徴があり、その集団の構成の複雑さとブラーマプートラ河などの集団隔離などの影響が推測された。 ベトナム、タイ、ミャンマーの研究協力者はそれぞれ、南ベトナムにおけるマカクの分布と生息実態、タイのカニクイザル集団の地理的変異性と生息実態、ミャンマーのカニクイザル亜種(Macaca fascicularis aurea)の繁殖季節性を報告した。
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