研究概要 |
インドネシアでは1970年代始めにイリヤンジャヤとカリマンタンで最初の熱帯熱マラリア原虫のクロロキン耐性が発見され,その後全国に広がっているが,現在でもマラリア治療薬の第一選択薬はクロロキンで第二の選択薬はSP合剤である。クロロキン耐性変異の全容は明らかでないが,Plasmodium falciparum chloroquine resistance transporter gene(Pf CRT遺伝子)のアミノ酸配列72-76までの耐性変異配列がアジア,アフリカ型とパプアニューギニア,南米型に分類されることが知られていた。しかし近年各地域からの変異データが集められてくると,2つの起源だけでは説明できないものがある。とくにインドネシアではいったいどのように発生して広がってきたのかよくわかっていない。パプアでは近年パプアニューギニア型の他に多数のアジア型が認められることが示された。私達の調べたバリ島東側のロンボク島では,大部分のパプアニューギニア型に混じって少数のアジア型が認められた。多様性マーカー遺伝子(Glurp)からみると,少数アジア型については単一クローンが拡大したものであった。すなわちこの地では古くからパプアニューギニア型が入り込んだか,この地で独自に発生した状況のもとに,最近アジア型が移入されたことになる。同じ現象についてカリマンタン,ジャワ島で調査が進められている。
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