研究概要 |
初年度は具体的な問題や解決の可能性の高い待ち時間分布の導出をはかることであった.具体的には2値高次マルコフ系列において指定された長さの連がはじめて起こるまでの待ち時間分布の確率生成母関数の導出をすることがひとつの目的であった.このためには研究者との研究打ち合わせを行い,具体的な関数の導出に成功し,統計関連学会連合大会で発表した.また,この研究過程の副産物として,その平均の一般式を得ることができた.これらの検証のために,計算機と数式処理ソフトウエアを用い,また具体的な確率の計算が可能であることを確認している.この研究の問題点と特徴は,マルコフ系列の次数に対し,連の長さが大きいと確率生成母関数に関する線形方程式の数が多くなり,困難が生じることが問題であり,このたびの成果はこの困難をある程度克服している.すなわち,ここでの成果は連の長さには依存せず,マルコフの次数に基づくものであり,この意味で効率のよいアルゴリズムを与えていることが特徴である. このほかの今年度の研究成果としては,本申請にあたり準備していた結果を雑誌に公表できたことである.2値のm次元の独立な系列において2次元のパターンがはじめて現れるまでの待ち時間分布の確率生成母関数の導出とその工学的なシステムの信頼度の計算への応用をまとめたものである.この結果は今年度内に開催される数学会で発表の予定であり,発表に先立ち計算機と数式処理ソフトウエアによる確率計算を行い,これまでできなかった場合についても計算による確認をしている. また,このほかの成果については,研究打ち合わせを行い,テクニカルレポートにまとめているところである.
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