研究概要 |
有限個の文字を値にとる離散系列において,長さ有限の文字列(パターンと呼ぶ)の待ち時間分布(試行数)などの統計量の分布の導出や確率計算とその統計的応用の研究を行う.この研究は確率モデルとしての興味の他に,工学的システムの信頼性や品質管理などの統計的応用やDNA系列の統計的解析に有用な道具を提供してきている. これまでこのテーマに関して多くの成果を論文としてまとめてきた.これら一連の研究過程から得た技術をもとに,不規則な離散系列において生じるパターンに関する統計量の複雑な確率分布の性質や統計的応用について調べる.また,正確な確率を計算する方法の開発,その利用法などの問題について取り組んできた. 今年度申請の主要なテーマは以下である.2つのパターンをA,Bの待ち時間をそれぞれWA,WBとする.これまでの研究では系列がiid系列やマルコフ系列などの依存系列に対してMin{WA,WB}とMax{WA,WB}の分布の導出や統計的応用の研究がなされてきた.本研究では(WA,WB)の同時分布の導出とその統計的応用の研究を試みることであった.また,これらの研究過程で生ずる関連の問題に取り組むことであった. 高次マルコフ系列において,長さmの文字列WA,長さnの文字列WBがはじめて起こるまでの同時確率分布の確率生成母関数を条件付期待値に関するstepwise smoothingにより求めた.これによりWAとWBの周辺分布が求まり,見通しが良くなった.ただしマルコフの次数はMin(m,n)以下と仮定した.この結果をテクニカルレポートにまとめ,学術誌に投稿するよう準備している. この年度の主要な結果は以上であるが,マルコフ系列以外の依存系列に対してもパターンやスキャンの待ち時間の確率母関数法などについて考察をはじめた.これに関してはまだまとまった結果は出ていない.来年度に研究を継続し内容を深めたい.
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