日本語入門期の学習者が、日本語学習の成果をデジタル化し、Web上で公開し、日本人のボランティアスタッフと交流するコミュニティーを開発することが、本研究の目的である。2年間で、日本語教材、Webサイトの運営、スピーチ発表会などの行事を行った。日本語の学習が効果的に行われるよう、教室とWebサイトと行事を結びつけた。その結果、データのデジタル化では、手書きデータなどの古いメディアのほうが作りやすいこと。コミュニティーの形成には、いろいろなイベントを通して、直接交流する時間をできる限りとること。CMSについては、いっも便利というわけではなく、いままでの手段も利用しながら使っていくことなどが、分かってきた。これからの課題として、 (1)電子ポートフォリオの公開や日本語スタッフとの交流に、かららずしもCMSは便利というわけではない。今後は、WebサーバーのなかのCMSの役割をもういちど考える必要がある。 (2)留学生が、BBSなどで積極的に発言するには、日本人スタッフとの直接交流も重要である。直接会って話す活動を、うまく利用することで、BBSなどの書き込み状況は大きく変わる。 (3)学習コミュニティーを維持していくには、留学生や日本人スタッフというグループとしての枠組みでとらえるより、コミュニティー内の構成メンバー個人と、他のメンバーとのつながりのあり方、個人対個人の人間関係を醸造していく工夫が必要かもしれない の3点を指摘しておきたい。 2年間の研究期間中、さまざまな行事を企画し実施してきた。協力してくれた学校や、交流団体、市や県の担当者など、広い範囲のつながりを得た。こうした「むすびつき」をネットワークで結び、学習するコミュニティーの形が少しずつ見えてきたのは、大きな成果だった。
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