研究概要 |
洗浄実験を効率的に行うため,洗浄水を採水して被洗浄度を計測する手法を工夫した.濁度と油分濃度の相関から計測する方法を採用した.対象となる素材(鋼板,FRP)により洗浄曲線が異なった.タイルは計測が困難であった.水温の影響は,5℃〜30℃程度の水温差では,粘度は指数関数的に差異を生じるが,被洗浄性については大きな差異はなかった.重油エマルジョンの接触角は含水率が高くなると大きくなるが,対象物の影響は殆ど見出せなかった. 成分の異なる3種類のC重油を用いた洗浄実験を行った.C重油はイヤトロスキャンによる分析により,飽和分,アロマ分,レジン,アスファルテンの4成分の含有比がそれぞれ異なっていることを確認した.1種類だけ特に粘度が高いC重油があった.このC重油の成分は他の2種類に比べて特にアロマ分が少ない傾向がみられた.接触角は油種による差異は少なく,表面張力も,測定のばらつきが多かったが,油種による差異は少なかった.超音波洗浄において,残留した供試油は粘度に大きな差があるにもかかわらず,油種間の大きな差はなかった. 重油エマルジョンの表面張力および接触角は含水比が大きくなるにつれて大きくなることが確認できた.接着仕事を算出すると,含水比が大きいと接着仕事も大きく洗浄されにくいと予想された.しかし実験結果からは含水比が高い場合,洗浄されやすく,低い場合は洗浄されにくい傾向をもっていると見られる.このため,重油エマルジョンの被洗浄性は,含水比または接触角と相関があると考えられる. 油回収作業の現場では一般に油の粘度が高いと洗浄されにくいというイメージがあるが,洗浄実験の結果とは一致せず,現場で感じるイメージとの違いは,洗浄手段が水流やふき取りであることから,油の塊が硬い(粘度が高い)場合は物体表面への接着力ではなく,塊をちぎり取る反力を感じるためと推察される.
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