研究課題
本研究の目的は、環境資源を利用して作られる製品の輸出国による貿易政策が、環境保全におよぼす影響について主に貿易パターンの決定と要素賦存比率の関係との関連から動学モデルを用いて分析することである。昨年度、動学分析の基礎となる資源経済モデルの構築と資本蓄積過程の分析を行ったが、今年度も基本的には同じ方向性の研究を行い、新しい結果を得た。従来、資源ストックに関わる理論分析で不確実性を導入する場合には、時間の経過とともにストックが連続的に変化するようなタイプのものだけであったが、以前から考えていた資源ストックの大きさが時々不連続なジャンプを示すような場合の分析をさらに押し進めた。昨年度の研究で、すでにポワソン過程を導入して、各種の経済変数の最適経路がジャンプの影響をどのように受けるかを分析したが、今年度は、最終的に資源ストックがゼロあるいは最低限必要なある正の値を割り込む確率、あるいは反対にいつまでたってもそのような値を割り込むことがない確率について、何か確定的なことがいえるかどうかを検討した。また、単一の資源ストックを複数の採掘/採取者が利用することを想定し、彼らが協調して採掘に当たる場合と、非協力的な採掘を行う場合とを比較した。採掘あるいは採取された再生可能資源と物的資本を投入して複合財をつくり、その一部を消費して残りを用いて物的資本蓄積を図るというモデルと、資源ストックが予期せぬ経済事象により突然増加または減少することをモデル化するポワソン過程を組み合わせることによって分析を行った。最適消費経路は資本ストックの線形関数、最適資源採取量は資源ストックの線形関数になり、両者は互いに独立であることは、すでに前年度にわかっていた。今年度新たに導出された結果は、(1)突然発生する資源ストックのジャンプの大きさと、単位時間当たりに発生するジャンプの回数がそれほど大きくなければ、有限期間内にストックが枯渇する確率は1より低いと考えられるが、絶対に1にならないための厳密な条件が導き出された、(2)逆に、有限期間内にストックが必ず枯渇する条件も導かれた、(3)最適採掘/採取量は、従来のようにジャンプがない場合の採掘/採取者間協調解が、ジャンプを考えた場合のそれより多く、ジャンプなしの非強調解はジャンプなし協調解よりさらに高い、(4)ジャンプあり非協調解は、ジャンプあり協調解より多く、ジャンプなし非協調解より少ない、(5)ジャンプなし協調解とジャンプあり非協調解のいずれが多いかは不明、ということである。なお、(2)の条件は、単に(1)の条件を否定したものと同じではない。次年度は、これらの問題を2国モデルに拡張して考え、財または資源の国際貿易を導入し、政策形成の方向性を導き出す必要がある。
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Discussion Paper, Research Institute for Economics and Business Administration, Kobe University 177
Preprints of the 16^<th> IFAC World Congress July3-8
ページ: 6
Optimal Control and Dynamic Games(C.Deissenberg, R.Hartl eds.)
ページ: 41-60
ページ: 77-84