研究概要 |
本研究が与えられた研究期間の3年間で目ざしているのは以下の3点である.(1)英国における新教科「シティズンシップ」の目的や理念がテキストや学習プラン,教材にどのように具体化されているかを理論的に分析する.(2)授業としての「シティズンシップ」がどのように行われているか,上記のテキストや教材がどのように活用されているか,現況を調査する.(3)上述の結果を批判的に摂取することを通して,わが国の社会科公民的分野においてシティズンシップの育成をめざすモデルテキストを開発する. そのために,本年度は以下のことを行った.1)英国における教科「シティズンシップ」の実施状況および実施上の課題を把握するために,現地調査,授業者・専門家へのインタビューを行う.2)海外共同研究者を日本に招聰して国際シンポジウムを開催する.3)代表的なテキスト,教材を分析する. その結果,以下のような成果を得た. <1>現地地調査を通して,教科「シティズンシップ」は独立教科としてよりも,学校全体のカリキュラムのなかで,たとえば「学級活動の時間」などを読み替えて行われている場合が多いこと.資格カリキュラム機関(QCA)が発行するスキームオブワークや各種テキストを教材として活用しているものの,シティズンシップを専門に担当できる教員が不足していることなど,その実施にはかなりの困難が見られることが明らかとなった. <2>現地共同研究者を日本に招いてのシンポジウムを通して,シティズンシップ教育の歴史的背景や理念としてのアクティブシティズンシップについて,国内の教育関係者,研究者と研究交流することができた. <3>スキームオブワークやテキストの分析を通して,シティズンシップ教育の理念としての「批判的思考」の重要さが明らかとなった.
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