研究概要 |
代数体上定義された楕円曲線について、いくつかの整数論的性質を解明することを目的とした。 1.楕円曲線の1つのisogeny類を考えて、楕円曲線がこの類を動くときそのトーション群の大きさや構造がどのように変化するかを考察した。また、トーション群の位数の最大値に関するKatzの定理の初等的な手段による別証明を与えた。 2.有理数体上の楕円曲線で位数5の有理点をもつものを利用して類数が5で割り切れる二次体を作ることが出来る。これを利用してある条件をみたすパラメータと3次式の値を用いて類数が5で割り切れる二次体をすべて表示することが出来るかという問題を提起した.いくつかの実例を通じてその可能性を考察した. 3.虚数乗法をもつ楕円曲線とそれに付随するアーベル多様体を考察した。虚2次体Kに対し,それを虚数乗法にもつ楕円曲線をEとする.K上定義されたCM単純アーベル多様体Aは次元として類数倍となり、拡大体上でEの直積と同種であることが知られている.ここで更に ・Aの次元はKの類数と等しい. ・Aは有理数体に降下する(有理数体上のアーベル多様体になる). という条件をみたすAを特徴付けることに成功した.このような多様体に対応するヘッケ指標を具体的に構成し分類した.次に有理数体上定義された二次元アーベル多様体で定義体の拡大によりExEと同種になるものを考察した.このようなアーベル曲面はある条件をみたすガロア拡大とそれによる楕円曲線の係数制限を用いて得られることを示した.
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