研究概要 |
3次元ローレンツ型擬対称空間(M, g)が局所共形平坦で、局所既約であるとする。もしこの(M, g)が完備、かつ、断面曲率の下限が正ならば、(M, g)は非コンパクトである、ということを示すことができた。 これは、2004年秋の日本数学会幾何学分科会(千葉大学で開催された)での特別講演、小林利行氏の講演の中にあった予想のひとつを特別な場合に考察した結果である。すでに、(M, g)が3次元以上のローレンツ幾何における正曲率の空間形(完備で、定曲率)の場合には(M, g)が非コンパクトになることが、Calabi-Makusにより示されている(1962年)。彼らは、さらに、(M, g)の基本群が有限であることも示している。 上記のわれわれの結果は、曲率を摂動させた場合のものである。 擬対称空間とはリーマン空間(M, g)であって、その曲率テンソルがある等式を満たすものをいう。定曲率空間や2次元リーマン空間は擬対称空間である。これらは自明なものである。そこで、3次元で、定曲率空間でないものに注目することにしよう。その場合、このような空間は、O.Kowalski等により、次のように特徴付けられている:主リッチ曲率3つのうち2つが等しくて可変で、残りのひとつはゼロではない定数である。(この定数がゼロである場合には、とくに、半対称空間とよばれている。断面曲率の下限が正であるときに大域的構造を調べることを目標とする本研究にはまったく無関係なので、ゼロではない定数の場合のみを本研究の対象にする。)定数の主リッチ曲率に対応するリッチテンソルの固有方向に注目する。計量gに関するLevi Civita接続を調べると、その方向の積分曲線が測地線であることがわかる。計量gに随伴するローレンツ計量hとする。(M, g)が局所共形平坦である場合には、計量hに関しても、前述の測地線はやはり測地線であることが確かめられる。このような考察をとおして上の結果を得た。
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