研究概要 |
今年度は3年間の研究の初年度であるため,研究代表者の研究成果についてのみ報告する. 代表者は海外共同研究者イゴー トルーシンとともに「数理物理の微分方程式」(培風館)という本を書いたが,その第4章でSturm-Liouville逆スペクトル問題についての解説を試みた.そのなかで逆問題の一意性に対する証明を改良し,我々の共同研究に役立つ結果を得ている.共同研究のテーマはグラフ上のSturm-Liouville逆問題である.現在,この問題に対する研究が進展している. 代表者は代表者の研究室に属す大学院生と時間に依存し,エネルギー保存則の期待できない作用素,例えば時間に依存する摩擦項を伴う波動方程式などの発展方程式系の散乱理論の研究に取り組んでいる.これは一定の成果を得ており,論文として発表予定である. 代表者は内山淳(京都工繊大)と長い間oscillating longrange potennshalを伴うSchr"odinger作用素のスペクトル散乱問題に取り組んできたが,最近,以前の結果を統一的に扱える結果がまとまり,投稿論文を作成している. 非自己共役な波動方程式の逆散乱問題に関する結果もまとまっており,投稿論文を作成中である.これは摩擦項とともにポテンシャルも伴う波動方程式に関する問題である.散乱核の表示を得ることが第1の問題である.次に,それを基に逆散乱問題を解き,2つの固定したエネルギーレベルの散乱核から摩擦項とポテンシャルを同時に再構成する.これらの関数が指数減水するという条件のもとで,この問題の解答を得ている.
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