アルミニウム遷移金属系合金には従来結晶学では許されない5回や10回の対称性を持ち、正20面体原子クラスターや5角柱・10角柱原子クラスターのペンローズパターンという準周期的な配列からなる、準結晶と呼ばれる新しい物質群を形成する。その中でデカゴナル(D相)準結晶Al-Ni-Feはリバーシブルに準結晶-結晶相変態をするたいへんめずらしい系であるのではないかと、その仕組みを探るべく、比較・探索をも含めAl-Ni-Fe及びAl-Ni-Co、Al-Ni-Fe-Coの合金系で試料を作成し、高分解能X線実験でのフェイゾン歪観測を通して相変態を観測することを目的とする。 本年度の研究成果を以下に並べる。 (1)Al-Ni-Fe D相準結晶の単結晶を、高温相熱処理後の単結晶高分解能X線実験、低温相熱処理後の単結晶高分解X線実験を繰り返し、D相準結晶とAl_<13>Fe_4構造型近似結晶のリバーシブルな構造の変化が単結晶の形で観測された。多くの試料では熱処理での構造変化に伴い、10角柱の外形を保ったまま、方位の異なる微結晶の集合体になってしまうが、いくつかの試料でほぼ単一グレインの単結晶のまま構造変化を起こしており、構造上の方位性は、構造変化後も保たれていた。 (2)Co-rich Al-Ni-Co準結晶相において、理想二次元準結晶、一次元準結晶、数種類の微細なリニアフェイゾンが入った擬一次元準結晶、ランダムフェイゾン入り準結晶の組成温度相図における生成領域を、単結晶高分解能X線実験から確定した。新たなリニアフェイゾン量が入った擬一次元準結晶を発見したことで、一次元準結晶から近似結晶にいたる構造変化の関連性が見出された。
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