アルミニウム遷移金属系合金には従来結晶学では許されない5回や10回の対称性を持っ、準結晶と呼ばれる新しい物質群を形成する。その中でデカゴナル(D相)準結晶Al-Ni-Feはリバーシブルに準結晶-結晶相変態をするたいへんめずらしい系であるのではないかと、その仕組みを探るべく、比較・探索をも含めAl-Ni-Fe及びAl-Ni-Coの合金系で試料を作成し、高分解能X線実験でのフェイゾン歪測定を通して相変態を観測した。 (1)Al-Ni-Fe D相準結晶のフェイゾン歪の入っていない理想的な単結晶を850℃で得ることができた。この準結晶を低温(600℃)熱処理することで、双晶構造を持たない完全にAl_<13>Fe_4近似結晶相へと変態させることができた。これを、高温(850℃)で熱処理したところ、準結晶構造が回復した。さらに低温(700℃)熱処理することでAl_<13>Fe_4結晶相へと再変態した。D相準結晶とAl_<13>Fe_4型近似結晶のリバーシブルな構造の変化が単結晶の形で観測された。ほぼ単一グレインの単結晶のまま構造変化を起こしており、構造上の方位性は、構造変化後も保たれている。 (2)5fや5f_<HT>と分類されるCo-rich Al-Ni-Co D相準結晶組成領域において、いくつかのタイプの単結晶を育成することができた。1000℃でCoが最も多い領域では理想D相準結晶、それ以外の組成で900℃以上では一次元準結晶、さらに微細なリニアフェイゾンが入った擬一次元準結晶、800℃ではランダムフェイゾン入り準結晶を単結晶高分解能X線実験から見出し、この領域におけるフェイゾン歪の組成・温度依存性を確定した。微細なリニアフェイゾン歪が入った擬一次元準結晶を発見したことで、理想準結晶から一次元準結晶を通じての近似結晶にいたる構造の連続変化がより詳細に明らかとなった。
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