本研究は北部北太平洋におけるイカ類幼生の分布・豊度と初期生活史の解明することを目的としていた。表層より採集した外套長2.76-13.50mmの幼生281個体を幼生試料として用い、詳細な形態観察を行った後、mtDNA COI遺伝子領域の塩基配列を決定した。これらに、幼生試料3種(タコイカ、ヒメドスイカ、カムチャッカテカギイカ)、および既存のテカギイカ科の塩基配列データを加え、重複部の塩基配列を比較した。分子系統樹の樹形および塩基配列間の純塩基置換率から、幼生試料は以下の6種に同定され、形態に依らない分類査定法としてのDNA分析の有効性が示された:(1)ヒメドスイカ、(2)ヒカリテカギイカ、(3)テカギイカ、(4)ササキテカギイカ、(5)タコイカ(small form)、(6)Gonatopsis sp.(slender)。 この研究の結果は4つの国際会議に提示された:(1)2004 PICES(北太平洋海洋科学機構)年次総会、ホノルル(米)、ポスター;(2)2005 PICES年次総会、ウラジオストック(ロシア)、口頭;(3)2006 PICES年次総会、横浜、ポスター;(4)2007 AAAS(アメリカ科学振興協会)年次総会、サンフランシスコ(米)、ポスター。 この研究に集められたデータは北大の大学院生によって分析されて、本人の修士論文を完成するのに使用された(名:志村紗耶、タイトル:「種同定が困難なテカギイカ科幼生のDNA分析および形態形質による分類」、卒業:平成18年)。 今は二つの未発表原稿が準備中です:一つ目は幼生の形態について説明して、二つ目は幼生の分布パターンについて説明する。さらに、この研究の間、1匹のコウモリダコの幼生も採集して、本種が日本の近海で採集された例はほとんどなく、本研究においても重要な知見になる思われるので、論文を作成した(Bower et al.2006)。
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