研究概要 |
(-)-ガランタミンはヒガンバナ科植物から単離されたアルカロイドであり、近年欧米でアルツハイマー病の治療薬として使用されてきている。既に筆者らは超原子価ヨー素(PIFA)を酸化剤に用いる分子内酸化的フェノールカップリング反応を鍵反応としてガランタミンやその合成中間体となるナルウエジンの効率的全合成を開発してきた^<1)>。 本研究では上記の合成法を基盤として光学活性なアミノ酸を不斉補助基に用いるガランタミンの不斉合成を計画した。即ち、カップリング反応の基質にpyrogallolをもっnorbelladine型化合物を選び、これにアミノ酸(D-フェニルアラニン)を導入してキラルなimidazolidinone環を形成した基質を合成した。本基質を用いた分子内フェノールカップリング反応と続く保護されたpyrogallol水酸基の脱保護反応により、pyrogallol水酸基がジエノン部にMichael付加した環状エーテル体が得られた。本付加反応において2個のキラル中心がジアステレオ選択的(100% de)に構築され、この不斉誘導はキラルイミダゾリジノン環による7員環の立体配座の規制に基づいていることがコンピューター計算からも支持された。上記反応により生成したエーテル体から(-)-ガランタミンを収率良く合成することができた^<2)>。 更に、他の骨格をもつヒガンバナ科アルカロイド類の全合成に上記のカップリング反応を適用することを検討した。この結果、4種(sicline, crinine, epicrinine, oxocrinine)のクリナン型アルカロイドを短工程、高収率で合成することに成功した。また、buflavineは上記カップリング反応と続くジエノン-フェノール転位を鍵反応として効率良く全合成することができた^<3)>。
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