研究概要 |
近年,ユビキチンに類似したタンパク質が数種発見され,それらの蛋白質修飾の役割について高い関心がもたれているSUMO化は,蛋白-蛋白相互作用の制御,核への局在化,転写調節,さらには染色体の分裂などの諸課程において重要な役割を担っていることが明らかになってきた.本研究計画では,SUMOリガーゼPIASによる癌抑制因子p53のSUMO化に焦点を当て,(1)p53とSUMOリガーゼE3(PIAS)の結合部位の同定,(2)結合部位の立体構造の解析,ならびに(3)複合体の構造を明らかにすることを目標にした. PLASの標的タンパク質であるp53の結合部位を同定するために,多数のPIAS1の欠失変異体の作成し,癌抑制因子p53,転写因子Lef-1およびc-junに対する認識ドメインを同定した結果,PIAS1のN末端領域(1-65)がp.53およびLef-1と相互作用していることが判明した.まず,このドメインの立体構造をNMRにより決定した.この構造はユニークな4本ヘリックスからなり,その一部はDNA結合モチーフとして知られているSAPドメインを形成していた.このN末端ドメインはSUMOの標的蛋白質であるp53に対する結合部位であることをGST pull-down assayによって立証するとともに,DNAに対する結合部位でもあることをgel mobility shift assayによって実証した.さらに,このN末端ドメインと16bp DNAとの複合体に関するNMR解析から,4本ヘリックスの一端がDNAの副溝にはまり込むような形で結合していることが推察された.転写の因子に対する結合部位とDNAに対する結合部位がそれぞれ別の部位なのか,あるいは競合的なのかどうか,現在検討中である.
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