研究概要 |
近年定着しつつある移植医療の成功率を高めるには、サイトメガロウイルス(CMV)およびエプスタインバーウイルス(Epstein-Barr virus, EBV)などヒトヘルペス属ウイルスによるウイルス感染症を制御することが重要である。これらのウイルス感染症を制御するのは細胞障害性リンパ球(CTL)であり、その表面にあるT細胞受容体に組織適合抗原とウイルス抗原ペプチドが結合する。組織適合抗原とウイルス抗原ペプチドを試験管内で合成して蛍光色素で標識したものが組織適合抗原テトラマーであり、抗原特異的なCTLを同定することが可能になった。 本研究ではHLA A^*0201またはA^*2402を有する移植患者の血液からCMVまたはEBVに対し抗ウイルス活性を有する細胞障害性リンパ球を、組織適合抗原テトラマーを用いて検出した。CTLが最も頻度が高く検出されるのはHLA A^*0201を有する患者がCMVに感染した場合であり、感染の極期に最も頻度および絶対数が増加し、感染の終息とともに減少することを観察した。 これを応用し、細胞障害性リンパ球を豊富に含む患者血からこれを精製し増殖させ、治療への応用を検討しつつある。
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