[目的・背景]人生早期から新生児が母と音楽的な相互作用の中で精神発達を始めることをTrevarthenとMallochは明らかにしCommunicative Musicality(以下CM)理論としてまとめた。CMは母子の音声交流における以下の3要素からなる:1.pulse 2.quality 3.narrative。生理的未熟性と生命リスクを抱える未熟児は発達障害と母子関係障害のハイリスク群である。本研究は最早期の発達精神病理の基礎研究をめざし未熟児-母相互作用におけるCMを研究した。[対象と方法]満期正常産児と早産児の母。子の静かな覚醒状態にて母子各々にクリップオンマイクを装着しデジタルビデオで記録した。相互作用の箇所を抽出し、ws5160によりスペクトログラフ)、PRAATによりpulseとquality、narrativeを解析した。[結果]症例1.満期正常産児.誕生後1時間以内の母子相互作用のスペクトログラフにて水道管型ピッチ形を認めた。症例2.低出生体重早期産児.在胎34週2日に出生。生後33日目の母の発声から始まる相互作用にて、発声間隔が5.3秒□3.6秒□2.0秒とどんどん短縮することに一致して子の呼吸が早まり、拳と指、手と胸の接触が起きた。母が子を呼ぶ声に子が声で応じる音楽的やり取りがおきた。母子交互の発声間隔は0.6秒□0.7秒□0.8秒□0.6秒とリズムをなし、母子のピッチの形に類似性を認めた。症例3、4.双胎低出生体重児と母(ivf妊娠・産後うつ状態)生後2ヶ月時に母子の注視が生後1ヶ月に比べて減少し、子の自発的な視線回避が増えた。生後3ヶ月に育児支援体制が整った時期に一致し母子の注視が回復した。[結論]日本人の母子の早期産児にも満期産児と同じくCMが認められた。未熟にうまれた場合でも早期の一件偶発的なやり取りにおいて母子が共に響きあいながら生きている様子が音声学的に証明された。
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