われわれは、heparanase分子の癌の進展に対する関わりを解明し、胃癌、食道癌、大腸癌などの消化管癌における発癌、癌の進展、転移そして悪性度に強く関与している事を見出した。これらにつき別紙のごとく論文を作成し、掲載した。また、炎症性腸疾患の解析から、炎症の極期に局所で強く発現し炎症の軽快とともに、消退してゆく事を確認した。このことから炎症を主体とした病態の制御も可能であると考えている。これらの癌の進展、予後とheparanaseの関わり、さらに、heparanaseが上皮細胞を含めた正常細胞、腫瘍細胞の分化に関与している可能性を見出している。この中で、乳がん細胞の分化について別紙の如く論文がin printとなっている。また、これまでにheparanaseによる血管新生のメカニズムについての報告があるが、われわれはheparanase遺伝子導入によって新たな血管新生増生因子が発現する事を見出し解析中である。本科学研究費によるheparanaseの関わる血管新生の新しい情報伝達経路の解析、heparanaseの関わる上皮細胞の分化の解析である。当該研究の位置づけとしては、海外においてもI.Vlodavskyらにより研究が進められているが、われわれは本遺伝子の発見者の1人で命名者であるM.Nakajimaらとともに研究を行ってきており、本研究の内容は、Heparanase分子の分化、血管新生への関わりの解析と癌と炎症の新しい制御戦略の開発を模索している。
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