本研究は脳梗塞急性期のミトコンドリア保護にコバルトイオンを用い、神経細胞障害を軽減することを目的としている。ラットの脳表(in vivo)でミトコンドリア膜電位を観察するため電子伝達系観察システムで観察した。キセノンランプで365nmの紫外線を脳表に照射し、大脳皮質ミトコンドリアのNADH(90%以上のNADHはミトコンドリア内に存在する)を励起する。脳表のNADH蛍光を電子冷却CCDカメラ(解像度30μm×30μm)で15秒毎に連続的に撮影しミトコンドリア電子伝達系の酸化還元状態を観察した。しかし、電子伝達系観察システムのみでは、ミトコンドリアの酸化還元状態は把握できても、ミトコンドリア膜電位を測定することは不可能であった。そこで、今年度は励起光源、及び蛍光測定系を改善しミトコンドリア電位も同時に測定できるようにした。励起フィルタ、受光フィルタ、電磁シャッター、電子冷却CCDカメラをパーソナルコンピュータで一括コントロールし10秒毎にNADH蛍光とミトコンドリア電位が同時に測定できるシステムを構築した。ミトコンドリア電位はミトコンドリア電位感受性色素を先端径5マイクロのガラス電極より脳表に注入し測定した。コバルトイオンを塩化コバルトの状態で経静脈性に投与した。中大脳動脈閉塞による脳梗塞モデルを使用し、脳表のNADH蛍光領域の変化、およびミトコンドリア膜電位の変化を観察した。現在、ミトコンドリアの酸化還元状態およびミトコンドリア膜電位の変化を経時的に解析中である。
|