研究概要 |
昨年度までの研究引き続き前立腺癌のホルモン抵抗性機序について検討した。 (1)進行前立腺癌患者で、ホルモン療法前と再燃後に前立腺癌組織が得られた症例についてアンドロゲン受容体の共役因子であるARA55、TIF2について、その発現を免疫染色で調べた。その結果TIF2の発現には変化がなかったが、ARA55についてはホルモン療法前ではARA55の発現は前立腺癌の間質にのみ見られ、癌細胞にはほとんど発現は見られなかった。しかし、33%の症例においてホルモン療法後の再燃癌では癌細胞にもARA55の発現を認めた。これまでの我々の検討でARA55はアンドロゲンによるアンドロゲン受容体の転写活性を増強し、アンドロゲン高感受性の前立腺癌細胞で発現が上昇することを確認しており、このことから臨床症例においても再燃に伴い癌細胞でARA55の発現増強がみられ、このことがホルモン抵抗性機序のひとつであることが推測された。 (2)前年度までの研究でTNFαが前立腺癌のアンドロゲン感受性を亢進させ、ホルモン抵抗性に関与している可能性が考えられたので、前立腺癌患者血清中のTNFαをELISAで測定したところ、再燃癌症例(10例)で平均2.53pg/ml(SD 5.44)、中央値0.86pg/ml、非再燃例で平均0,49pg/ml(SD O.25)、中央値0.52pg/mlであり、再燃癌症例で有意に高値であった(P<0.01)。 以上より前立腺癌はTNFα等の刺激によりアンドロゲン高感受性になり、このことは再燃機序の一つである可能性が考えられた。
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