研究課題
基盤研究(C)
本研究の最終目的は、虐待事例に対する保健師のアドボカシー機能をその実態から明らかとし、保健師アドボカシーの概念構造や機能を構造化した保健師活動モデルを構築することである。研究初年度は、欧米で使われているアドボカシーの概念を我が国の保健師活動の実践の概念枠組みとして理論化の検討に活かすことを目的に、海外文献のアドボカシー用語の概念分析を行った。最近10年間の論文の中から、保健・看護・社会福祉関連の論文を抽出し分析した。アドボカシーの先行因子として「社会文化的な集団の特徴」つまり、ホームレスの家族、田舎の高齢者、子ども、妊産婦、シングルマザーという「健康弱者」グループがあげられた。それらは生活手段としての就労や歩く以外の交通手段を持たず、教育を受けていない、貧困、保険未加入などが共通していた。アドポカシー概念の属性として、従来の弱者保護主義にみる「代弁」「弁護」という概念から「ニーズの充足や、生活支援、就労支援を含む「生活擁護」活動に拡大している。アドボカシーの帰結として「生活擁護」には、(1)医療へのアクセス、(2)ソーシャルサービスの紹介とアクセス、(3)カウンセリング、(4)食の提供、(5)教育の提供、(6)住居またはシェルターの提供があげられた。研究2年目は、保健師関連雑誌に掲載された活動事例の執筆者に、アドボカシー機能に関するインタビューを行った。保健師のアドボカシーは、保健師のマインド(事例への思い入れ、先を見越した予防的な支援、連鎖を断ち切りたいなど)と支援行動(虐待する親も支援する、健康な大人を登場させるなど)に分類された。研究3年目は、文献や質的な分析で明らかとなった保健師アドボカシー支援行動を枠組みに質問紙を作成し、行政保健師に対する全国調査を行った。対象者は、県型および政令市保健所(全数)保健師687名と市町村(2/3抽出)保健師1160名とした。回収率は保健所43.5%、市町村56.1%であった。保健所・市町村保健師の40%弱が、ほぼ毎週からほぼ毎月に一度の頻度で虐待事例とのかかわりがあり、育児不安から深刻な事例までを保健師一人が1〜9事例かかえていた。アドボカシー(支援行動)としては、アセスメント・家庭訪問・継続的支援・子と親の安全保障の項目が高得点であった。保健所・市町村保健師ともに子ども虐待事例に予防的に関わっているが、深刻な事例対応等において保健師自身をサポートする体制の必要性が示唆された。
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