研究概要 |
公害物質には芳香族化合物や含ハロゲン化合物が多く,いずれも水酸ラジカルによる分解を極めて受けやすい性質の物質である。また、生物系実験廃棄物として有害重金属を添加した細菌培養培地が発生する場合があるが,これは有機系廃棄物としても無機系のものとしても処理が困難である。処理法として含まれる有機物質を酸化処理して重金属廃液とすることが考えられる。その他、溶媒抽出の水層,ドラフトスクラバーの洗液,実験廃液などとして事業所での研究において発生するこれらの物質について、申請者の開発した炎水界面反応を用いた水酸ラジカル反応による分解条件を決定し、各事業所などで自作可能な廃棄物原点処理機の構造とその運用法の提案を行うことが本研究の目的である。 ほとんど全ての有機化合物を酸化分解する場合に、ギ酸が副産物として多量に発生することが明らかになった。ギ酸はラジカル反応の抑制効果を有するため、有害物質の酸化分解中にもギ酸の発生により分解効率を低減させることが予想された。まずギ酸による有機物の酸化効率抑制効果の評価を行った。プロピルアミンの水溶液に対し酸素水素比が1:1、1:2、および1:5の酸水素炎を接触させる反応系において、溶液中のギ酸濃度が1%、5%、10%、20%、30%の場合における基質の減衰速度を求めた。溶媒にギ酸を添加しない時に比べて、酸素水素比1:5でギ酸濃度30%の時には基質の減衰速度が100分の1程度まで低下した。一方、実際の有害物質の分解中におけるギ酸の発生率は最大10%とした場合に相当する条件、すなわち酸素水素比1:1でギ酸濃度1%の時には、ギ酸無添加時に比べて基質の減衰速度は10分の1程度であった。この結果から、本法による有害有機物の分解処理において、酸素水素比が1:1の燃焼炎を用いて、発生するギ酸が1%を超えないような有害物濃度の廃液を処理する場合には十分な処理能力を得られるとの知見を得た。
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