現在、実対称固有値問題の数値解法の中で、分割統治法は演算量最小の解法である。従来の分割統治法では、ハウスホルダー法による前処理により構成した実対称3重対角行列Tを2分割し、Tを大きさのほぼ等しい2つの実対称3重対角行列の直和と階数1の摂動の和で表すことをアルゴリズムの基本にしている。本研究ではこれを拡張し、一般にTをk分割し、Tを大きさのほぼ等しいk個の実対称3重対角行列の直和と階数k-1の摂動の和で表し、これを元に従来より演算量の少ない分割統治法のアルゴリズムの構築を目的としている。平成16年度の得られた主な成果・結論・実績は以下のとおりである。(1)k分割分割統治法のアルゴリズムを構築し、その結果、従来の2分割の場合に比べ、演算量を約3k/(2(k^2-1))に減らせることを示した。(2)固有値の計算に関しては、k分割の際においても、摂動項の順序を適当に並べ直すことにより、本質的に2分割時と同等のアルゴリズムを構成することができ、分割数を増やすことにより演算量が増加することはないことを示した。(3)分割統治法で問題になる固有ベクトルの直交性の確保は、4倍精度演算を適当な箇所に導入することで行った。(4)提案アルゴリズムに基づくプログラムを作成し、前3項の妥当性を数値的に検証した。(5)実装したプログラムの演算量を定量的に評価した。この評価により、問題サイズに応じた最適分割数の決定が可能になった。(6)以上の成果をまとめた論文を日本応用数理学会論文誌に投稿した。現在査読中である。
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