本研究では、realatively robust representation algorithmとともに最新の実対称固有値問題数値解法として著名である分割統治法の拡張を行い、従来2であった分割数を3以上に拡張可能なアルゴリズムを構築し、演算量の大幅な削減を図ることを目的としている。昨年度(平成16年度)はk分割統治法の初期版アルゴリズムを作成し、固有ベクトルの直交性を保証するために部分的に拡張精度演算を必要とするものの、従来の2分割に比べ演算量を約3k/(2(k*k-1))に削減することに成功した。今年度はまず、昨年度末に日本応用数理学会論文誌に投稿した上記成果をまとめた論文の改訂を行い、同誌に論文を掲載した。更に、実質的な進展として、2倍精度演算の範囲で、しかも、演算量の実質的な増加を抑え(行列サイズをnとしたとき、主要項であるn*n*nのオーダーの演算量を増加させることなく)、固有ベクトルの直交性を保証できるアルゴリズムを作成することに成功した。現在、分割統治法が苦手とされる悪条件問題を含め、種々の問題で改良アルゴリズムの有効性(特に精度保証の状況)を検証中であり、同時に、改良アルゴリズムの演算量の定量的評価、それに基づき、行列サイズに応じて最適分割数を決定する手順の検討を行っている。また、これらの成果を論文にまとめる作業も平行して行っており、今年度末また次年度当初に日本応用数理学会論文誌に投稿する予定である。
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