研究概要 |
本研究では,雷現象を落雷点の土壌等の磁化から調べて,雷撃電流の大地に及ぼす効果と土中での挙動を研究することを目的としている.昨年度に続いて,超伝導磁力計や研究手法の改良を行い,また雷現点周囲の誘電率調査のため,地中レーダ探査装置の整備も行った.本年度の研究の成果の一部を以下に示す. (1)落雷を被った富山県朝日町の田圃において,10mx10mの範囲から2cm立方のプラスチックケースに採取した数千個の試料の研究を進めた.残留磁化から雷撃電流が作る強力な磁場を復元して推定した落雷地点は,稲の変色から想定された範囲の中心より僅かにずれていた.その点を中心に,田圃土壌の残留磁化は反時計周りの方向分布を示しており,雷撃は負極雷であったことが判明した.さらに,中心から近傍の側溝へ向かって磁化の強い領域があり,土中を伝播した雷撃電流の軌跡を示すと考えられた.水田に水が張っていた時期であり,雷撃電流の伝播の詳細はフラッシュオーバーの研究につながるので,結果を更に検討している. (2)北海道岩見沢市において約70年前に生じた強力な落雷により形成された雷管石の磁化特性を研究した結果,雷管石の形成状況が検討できた.結果は今年9月に開催されるIGCP2006において発表予定で英文論文にもまとめた.落雷の大地への影響の研究として,富山県大多和地区で長年の観測により蓄積されている地電位データを解析し,落雷時の大地の電気物性の応答を検討した.この結果も,IGCP2006にて発表予定であり,併行して英文論文にまとめている.
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