研究課題
直翅目昆虫(コバネイナゴ)に対する鳥の非致死的効果(自切)の実態を解明するために、(1)野外調査による野鳥相の把握、(2)野外実験による捕食回避行動の適応度コストの検出、および(3)野外で実現する自切率の理論的解析の3つについて検討した。(1)については、イナゴ成虫と同時期に出現し個体数が多くかつイナゴの生息地で採餌する野鳥はほぼセグロセキレイとホオジロに限られることが分かった。いずれも雑食性の小鳥でありかつイナゴのハビタットでは時々採餌するにすぎないジェネラリストであることが分かった。(2)については、自切は生存率に影響しないが、オスの配偶成功を低下させ、かつメスの採餌行動を低下させることが分かった。オスの配偶成功が低下するのは、自切によりメスの交尾拒否行動である後脚によるオスの蹴り落としの効率が上がるためと考えられた。メスの採餌行動が低下するのは、自切すると稲の刈り穂内部などいわゆる天敵不在空間を利用するように行動が変化するためであることが分かった。(3)については、野外で実現している10〜20%程度の自切率と高い生存率が矛盾なく達成されるのは、被捕食圧、致死率、自切コストなどがきわめて限られたパラメター領域にある場合に限定されることが分かった。こうしたパラメターを実現できる捕食者は、小型から中型の雑食性ジェネラリストでかつ致死性の低い鳥であると推定され、いずれの結果も高い整合性を示した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Proceedings of Royal Society of London, Biology 273(in press)