研究課題
わが国のHelicobacter pyloriは、胃癌と強く関連した強毒型である。本研究では、強毒性マーカーであり、初期感染機構であるタイプIV分泌システム(cag PAI)の機能に焦点をあて、そのヒト胃粘膜での発現様式と発症との関係を解明する。まず、患者胃粘膜で観察されたH.pylori初期感染機構"2段階粘着"について解析した。H.pyloriはcag PAI以外の粘着メカニズムで胃粘膜に粘着し、次にcag PAIを使って上皮細胞の微絨毛を泡化して除き、強固な粘着(intimate adherence)を行う。この際、CagA分泌蛋白の役割は、培養細胞実験成績に基づいて考えられてきた"hummingbird"型細胞変性ではなく、上皮細胞の萎縮と剥脱であると考えられた。このような強固な粘着は宿主依存的で、同一クローンによる家族感染で、強固な粘着が高頻度で検出される感染例と、殆ど観察されない感染例が観察された。わが国で分離されるH.pyloriはcagPAI陽性(cagA、cagE陽性)の"強毒型"である。そこで、極東ロシアでの感染例について同様の解析を行った。予想通り遺伝子型はわが国とは異なり、cagA陰性例が約20%存在した。このcagA陰性例には、従来余り検討されてこなかった症例が含まれていた。例えば、胃癌例があり、膵炎や食道粘膜下腫瘍例が含まれていた。今回見いだされた胃癌例、膵炎例あるいは食道粘膜下腫瘍例とcagA陰性H.pylori感染の関連解明が急務であると考えられる。また、H.pylori細胞内ATPレベルの解析で重要な知見が得られた。幾つかの試薬でH.pylori細胞内ATPレベルを低下させると、H.pyloriの強い運動性が瞬時に停止した。H.pyloriの運動性とATPレベルに関連があることが分かった。
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