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2004 年度 実績報告書

18世紀後半のドイツ探検旅行記をめぐる博物学と植民地主義に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16720064
研究機関関西大学

研究代表者

森 貴史  関西大学, 文学部, 専任講師 (10318743)

キーワードゲオルク・フォルスター / ジャン・ジャック・ルソー / クロード・レヴィーストロース / 文化進化主義 / 記述民俗学 / 文化人類学 / 植民地主義 / 「身体」の美的優劣
研究概要

フォルスターの『世界周航記』にみられる博物学的な記述のうち、とくに南太平洋諸島の住民たちに関するものは、ヨーロッパにおける初期の「民族学」あるいは「人類学」ともいうべき性質をもっている。このばあい、フォルスターは、自身のフィールドワークによってデータを集積する「記述民族学」をおこなっているといえる。これに対して、もうひとつの民俗学の方法論をとっているのが、ジャン-ジャック・ルソーである。レヴィ-ストロースによれば、ルソーこそが最初の人類学者という位置づけである。ルソーの『人間不平等起原論』で展開されているオラン・ウータン論は、人間性の起源について探究するものであるが、ルソーは、厖大な旅行記の情報をもとにして、これを立論している。すなわち、かれは収集された事実について考察する人類学である「文化人類学」の方法論をとっているということであって、「記述民族学」と「文化人類学」というバイナリズムに、ルソーとフォルスターの方法論や記述の差異を還元できるのである。しかし、非ヨーロッパ社会や住民に対する両者の見解は、<文化進化主義>という点で軌を一にしている。現代では、両者のこうした視点をヨーロッパの視点から批判しているのは、レヴィ-ストロース初期の著作『人種と歴史』(1961)における反文化進化主義の思考である。したがって、フォルスターとルソーによるふたつの著作は、その後のヨーロッパの植民地主義の方向性を決定づけるのに寄与したといえるだろう。
そして、フォルスターにおけるこのような<文化進化主義>の視点は、南太平洋諸島の住民たちの「身体」の記述にも色濃くあらわれている。その「身体」描写もまた、かれによって低い文明/文化とみなされた「未開人」の劣性を根拠づけ、非ヨーロッパ世界の住民をヨーロッパとの対比において、「優劣」の図式に配列する言説を形成してしまうのが明らかなのである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2005

すべて 図書 (1件)

  • [図書] ドイツ語が織りなす社会と文化2005

    • 著者名/発表者名
      杉谷眞佐子, 高田博行, 浜崎桂子, 森貴史
    • 総ページ数
      426
    • 出版者
      関西大学出版部

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公開日: 2006-07-12   更新日: 2016-04-21  

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