研究期間の2年目である平成17年度は、前年度にドイツ・ゲッティンゲンのパウリーナー教会図書館で収集してきた文献を読みながら、分析を進めてきた。 17年度に、本研究課題に関係しておこなった学会発表は2件で、それぞれが関連する学会から2006年度に刊行される論集に収録されることが決定している。1件は、2005年5月3日に開催された日本独文学会春季研究発表会のシンポジウム「18世紀にみる<秩序>」で発表した「未開の自然にある庭園フォルスター『世界周航記』における自然描写」である。本発表は、ゲオルク・フォルスターのテクストにおける自然描写が、同時代の庭園理論書や文学テクストとインターテクスチュアルな関係のなかで形成されてきたものであって、コロニアリズムともいくらか結託したものでもあることを述べたものである。もう1件は、2005年7月28日のHumboldt-Kolleg in Kyotoにおける発表Grenzen zwischen Fiktion und Non-Fiktion : Robinsonade und wissenschaftlicher Diskurs im 18.Jahrhundert(和訳:フィクションとノンフィクションとの境界:18世紀におけるロビンソン風物語と科学的ディスクール)は、さまざまな航海記や旅行記のテクストがフィクションである小説に援用されていく過程で、ロビンソン風物語の発展に寄与する一方で、コロニアリズムの言説形成にも影響を与えていたことを明らかにしたものである。 本年度もまた、ドイツにおける調査をおこなった。前年度同様にゲッティンゲンのパウリーナー教会図書館はもとより、今回はおもにシュレスヴィヒ、シュトゥットガルト、カッセル、ルードルシュタット、ヴェールリッツ、ビーレフェルト、ドイツ各地に残っているヴンダーカンマー(驚異陳列室)といった自然史博物館を来訪し、多くの文献資料を収集することができた。これらの資料を用いた分析は、最終年度である来年度にまとめて成果として結実させる予定である。
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