本年度の研究では、翌年度以降の研究のために書籍その他の資料を収集することを主たる目的としていた。そのため、実際に執筆した論文は、間接侵害制度関連では「用尽」に関するもののみであった。 用尽とは、特許製品が転々流通する場合には、条文上、そのたびごとに特許権者の許諾を要することになるが、それでは流通を阻害することとなるため、新製品の流通については逐一の許諾を不要とする法理である。この問題に関し、裁判例を整理検討し、提言を行った。 間接侵害に関連する論点としては、特許製品そのものではない専用品についても用尽を認めるべきか、という問題があり、これに関連して、方法特許についても用尽がありえるか、という問題について深く検討を行った。専用品にかかる論点は議論が始まったばかりであり、今後もこの問題を追及していきたい。 また別の論点として、いったん販売した特許製品を修理ないし再生産する際に、特許権者の許諾を要するかどうか、および、要するとすればそれはどのような場合か、ということについて議論を行った。特に修理と再生産の論点については、社会的に有名な裁判例があり、それを含むその他の裁判例についても体系的に整理しなおした。修理と再生産の議論については学説もまだ定説をみないが、意義ある提言を行ったつもりである。 また、本年度は投稿にいたらなかったが、間接侵害における多機能品の問題についても原稿執筆中であり、翌年度の早い段階に公表できる予定である。
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