研究概要 |
本年度は,精神障害者地域生活支援サービスと利用者の接合面に生じるリスクを一定の科学的手法と枠組みにより評価,情報共有,管理するシステムモデルを構築するための基礎的研究として,サービスにおけるリスクの概念と構造について明らかにすることを目標に研究を計画し,実施した。 1.精神障害者地域生活支援サービスに関わる利用者,専門職員,ボランティア等一般市民を対象に,リスクへの認識と対応に関するグループインタビューを実施した(精神障害者地域生活支援センター等6ヶ所において16回実施)。その結果,「セルフヘルプ」「市民サポーターの関与」「コミュニケーション」「経験に基づく認知と対処」「協働的ガバナンス」という重要カテゴリーが抽出され,その相関構造によりリスクが定義付けられることを傾向として捉えた。なお,結果の一部については,2004年6月,第3回日本精神保健福祉学会(富山)において発表した。 2.モデル試案の導入を依頼している精神障害者グループホームにおいて,サービスにおけるリスク構造の把握を目的とした参与観察及びフィールド・ノーツの作成を平成16年4月より,月4回の頻度で行っている。(平成17年度末まで実施予定) 3.先行研究の検索及び分析では,社会福祉領域において一般的に用いられるリスク評価モデル(4M-4Eモデルなど)を本研究の対象に導入することの妥当性と限界について考察した。その上で,Habermas, J(1981), Luhmann, H.(1984)などによる現代的社会理論の視点を採用したリスク分析の必要性を認識した。 以上の結果を踏まえ,精神障害者地域生活支援サービスにおけるリスクアナリシス・モデルに必要なシステム及びプログラムを明らかにすることを目的としたアンケート調査を計画し,調査項目の選定,有識者との意見交換などを進めている段階である。
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