研究概要 |
ロシア連邦における校長・教員の人事評価の現行法制と実態は次の特色を有している。 第一に,教員は,希望により二級教員,一級教員及び上級教員といった5年間有効の上位資格を取得することができるが,そのための資格審査が,研修と結びついて行われている。上位資格取得のためには,それぞれ学校,地方自治体又は連邦構成主体が設置する資格審査委員会が行う資格審査に合格しなければならない。資格審査に際しては,72時間以上の研修が一般的な条件となっており,上位資格を取得し続けようとする教員は,自らの資質・能力の向上を証明するため,少なくとも5年に1回の割合で研修を受けることが必要となる。したがって,資格審査は,申請時における教員の資質・能力を審査するだけに留まらず,その後の職能成長の可能性を奨励・保障する意図をもって行われているといえる。第二に,二級教員,一級教員及び上級教員については,教員が,より上位の資格取得を希望するにつれて,学校,地方自治体さらには連邦構成主体のレベルでの学校教育の改善に役立っ実践が求められるようになる。そのため,資格審査を通じた教員の人事評価は,結果的に,学校,地方自治体及び連邦構成主体で提供される学校教育そのものに対する評価と一定の重なりをもち,上位資格の取得を目指した教員個人の自発的な取り組みが,地域の学校教育全体の改善に直接に反映されることを期待するものと捉えられる。 なお,校長は,聞き取り調査を行ったサンクトペテルブルグ市並びにモスクワ州では,そもそも一級教員または上級教員の資格取得が条件とされている。また,校長になって以降の活動に対しては学校そのものに対する評価と同義とされているが,この点については今後の課題である。
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