Banach空間における近接点法の研究と、投資機会が変動する場合の連続時間ポートフォリオ問題の2つについての研究を行った。 Banach空間における近接点法の収束性については、限定された条件の下ではあるものの、弱収束性を証明することに成功した。 連続時間ポートフォリオ問題については、いわゆるファクターモデルを考え、そのモデルにおけるべき型効用関数の期待効用最大化問題に取り組んだ。成果としては、まず期待効用最大化問題が解を持つための十分条件を与えた。これはよく用いられるverification theoremが今回のモデルには直接適用できない点に難しさがあった。この研究から得られた知見として、ファクターモデルにおける連続時間ポートフォリオ問題が解けるかどうかは、結局HJB方程式から導出される行列型Riccati微分方程式の解が存在するかどうかに帰着する、ということが挙げられる。また、十分条件が満たされない場合にどのようなことがマーケットに起こるかの例をいくつか作ることに成功した。これらの例により、数値計算によりポートフォリオ問題を解く際、十分条件を満たす範囲で、問題を設定することの重要性が示せた。 以上の研究をもとに、近接点法による多期間ポートフォリオ問題の解法に取り組んだ。モデルは上と同じく、ファクターモデルとし、設定するマーケットパラメータは得られた十分条件を満たすようにしてある。小規模の問題については数値計算に成功している。来年度はこれらの成果を元に、大規模な問題の解法に取り組む予定である。
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