時間発展に関して特異性のある係数を持つ線形発展方程式の初期値問題の解の漸近挙動の解析、および、それらの結果を、ある種の非線形発展方程式の大域可解性の証明へ応用する可能性に関する研究を行った。 平成16年度における研究実績は、主に以下の2点である。 [1]通常は、解の安定性に悪い影響を持つという仮定の下で取り扱われている変数係数(特に振動する場合)も、振動の影響を考慮した適切な対角化を方程式に対して行い、WKB解を構成すると、振動が悪影響を及ぼす可能性が生ずる、その限界のオーダーを見つけることが可能になる。このような手法によって、従来の「振動しない係数を持つ方程式の微小摂動」という立場から問題を捉えてきた過去の研究結果から見ると予想し難い、悪いオーダーの振動を持った係数に対しても、解の安定性が証明できることを示した。更に、ある種の方程式においては、振動する係数が悪い影響を持つどころか、むしろ振動しない場合よりも、解が安定である場合があり得ることを証明した。具体的には、係数が振動しない場合にC^∞適切となるための条件:Levi条件が、係数が振動するモデルに対しては、ある種の条件の下、振動しない場合にはありえないオーダーにまで緩められることを示した。(上記の研究結果は、本補助金で招聘したM.Reissig氏との共著論文として、現在専門誌に投稿中である。) [2]研究結果[1]等で培った手法を、より一般的なp-発展方程式に応用する可能性について、本補助金で招聘したM.Reissig氏、M.Cicognani氏とともに研究を行った。この研究に関しては、現在継続中である。
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