時間発展に関して特異性のある係数を持つ線形発展方程式の初期値問題の解の漸近挙動の解析、および、それらの結果を、ある種の非線形発展方程式の大域可解性の証明へ応用する可能性に関する研究を行った。 平成17年度における研究実績は、主に以下の2点である。 [1]Kirchhoff型非線形波動方程式の初期値問題の時間大域解を、実解析的でない、ある種の関数空間上で証明した。この結果の証明で本質的な役割を果たしたのは、新たに開発した、係数の振動による解の滑らかさの損失のオーダーを、係数の滑らかさに応じた精度で評価する方法である。これにより、時間に依存する滑らかな係数を持つ線形強双曲型方程式に対する精度の高いWKB解の構成が可能となり、その結果、非線形問題の結果も既知のものより大きく改善された。(上記の研究結果は現在専門誌に投稿中である。) [2]Lipschitz連続でない係数を持つp型発展方程式のL^2およびC-無限適切性を証明した。この結果、およびその最適性の証明には、[1]で導入した滑らかな係数を持つ強双曲型方程式のWKB解の構成方法が本質的な役割を果たしている。(上記の研究結果は、M.Reissig氏、M.Cicognani氏との共同研究の形で現在専門誌に投稿中である。)
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